上人橋通り物語 第十三話

 

お客さんのいないお店ほど

辛いものはない。

すべての原因は僕にあった。

 

上人橋通り店。

江里先生のイメージには、

ライティングなどもこだわり女性が綺麗に見えるお店。

女性だけでも行きやすいお店。

そして最も女性が好む焼き鳥屋さんというのがあった。

 

「八島くん、想像してごらん。カウンターを埋め尽くす綺麗な女性たち。そして、このお店が福岡の女性でうめつくされる絵を。」

 

そして僕は想像した。

いや、想像してしまった。

あゝ、夢の世界やん。

やる気しかおこらんやろ!

スタッフだって燃えて料理を作る!

さ、最高やんか!

 

その気になった僕は、案内状の最後の一行にこう書いてしまった。

 

[*男性のみのお客様の入店はお断りいたします。

是非、女性同伴でおこしください。]

 

馬鹿か!

 

想像してそのままを案内状に書いてしまうなんて!

イキるにもほどがあるやろ。 

 

恥ずかしい、本当に思い出すたび恥ずかしい。顔から火が出そうなくらい。

あの頃にもどって、このイキりきった馬鹿ちんの背中を思い切り飛び蹴りしたい。

 

まずは、その案内状が原因でお客さんが行きにくくなった。 

「八兵衛行きたいけど、男性だけは行かれんってよ。」

「なんで?なにそれ?」

「案内状に書いてあったげな」

この男性だけでは

行けないお店という噂はかなり続いた。

すぐにそうじゃないですよ。

来てくださいよって訂正しまくったけど。

 

それともう一つの暇な原因。

それは、このデザインされたお店でどう振る舞っていいのか?

このお店にあった焼とりや料理。

山芋鉄板とかモツ煮とかニラ玉じゃないよなぁ。

僕もスタッフもわからなかったのである。

 

初めて着る高級仕立てのスーツ。

歩き方もぎこちなく、立ち振る舞いだってオドオドしてたと思う。

いわゆる着こなすことが、できてなかったんですね。

 

お客さんをどう楽しませたらいいのかわからないから、お客さんもどう楽しんだらいいのかわからない。

 

これに尽きると思う。

 

僕たちは、楽しませかたが下手だったのである。

何よりも自分たちが楽しみ方をわかっていなかったから。

 

再来店がなければ

お店は成り立たない。

 

お客さんに、もう一度行きたいって思わせることができてなかった。

 

この二つの大きな原因が暇の理由。

勝ちに不思議の勝ちあり。

負けに不思議の負けなし。

暇なお店には必ず原因がある、

 

やはり、めちゃくちゃ落ち込んだ。

自分のせいやん。

自分を憎んだし自分を責めた。

 

そんな時って本当に慰めの言葉が嫌だった。

夜は明ける前が一番暗いとか

神様は乗り越えられない試練は与えないとか。

 

いや、明けない夜もあるし。

乗り越えられない試練あるし。

しかも、誰にかけられた言葉でもなくて自問自答してただけ。

そんなワードにも八つ当たりしてた。

 

僕、大丈夫?

 

つづく

店主 八島 且典