上人橋通り物語 第四話

 

江里先生から、まさかの反撃というか返しには参った。

「わかってないのは、八島くんじゃない?」  

僕は少し小さめの声で話した。

「なに言うとんねん、このおっさん」

(18歳のころ大坂・八尾で丁稚奉公してた時に覚えた言葉)

 

まったく話しならない。

ここまでの強敵はなかなかおらん。

 

そして、江里先生が言った。

「八島くんなら、できると思ったけどなぁ。だって挑戦者じゃない?八島くんって。そのイメージで上人橋通り店をデザインしたんだけどなぁ」

「いやいや、意味わからんって」

 

とは言え、挑戦魂をくずぐられたのは間違いなかった。

 

いかん、いかん負けるな!

引くな!

耳をかすんじゃない!

 

そして江里先生は続けた。

「八島くんできないの?」

「うっ…」

痛いとこつきよる。

できるかできないかって言われたら

できるよ!けど、無理だって。。。

けど、気持ちがグラつきよる。

いかん、いかん、いかんぞ!

挑戦とは違うぞ。今回は。

 

冒険家植村直己さんの言葉

「冒険とは生きて帰ってくること」

この言葉がリフレインしてた。

 

これやっちゃうと死ぬ。

直感でそう思った。

 

思ったにもかかわらず

この男はやっちゃうのである。

 

「誰もやったことない」

「先頭をはしる」

「時代の先駆者」

「既存への挑戦」

「これからの当たり前をつくる」

「きっとこれが当たり前になる」

 

性格だと思う。

こんなワードに弱い。

 

けど、しぶしぶだったよ。

ほんとよ。

 

そんなわけで、なんとなく

しぶしぶではあるけど、江里先生とこの上人橋通り店を作っていくことになる。

 

そしてだいぶ完成も近まり、焼き台の後ろの壁に京都で一枚一枚焼いた瓦を埋め込んでいた。

おーーー!

遂に瓦壁完成やん。

イメージは玄界灘の波、そして博多屏。

 

眺めながら職人さんが、

これを一枚一枚はる苦労そして技術を話してくれていた。

そんなに大変なんだ。

凄い!

 

そして江里先生が来てみんなで一緒に眺めていた。

「うん、うん…」

納得したのだろうか、いや一瞬顔が曇った。

「これピッチ合ってる?

間隔。

これじゃダメ。やり直して」

 

え?

 

つづく

店主 八島 且典