2号店の天神店がうまくいってきて。(いやそれでも天神店は収益がでるのに2年くらいかかったけど)
さあ、3号店を出そうとずっと物件を探していて、見つかったのが今の上人橋通り店だ。
その頃あの通りは「沼田病院から薬院六つ角にぬける道」って呼ばれていた。
タクシーが通らない道でもあったし、何もなくて人通りもまばらだった。
夜中にトラックを停めて仕事していた大工さんに「だーれも通らんかったですよ。こげんとこでお店して大丈夫と?」って言われたくらいだ。
そんな場所で僕たちが作りたかったお店はズバリ天神店の拡張版です。
天井が高いので中二階つくって、屋台的な西麻布権八が作れればと考えていた。
35坪70席
客単価3500円
僕やスタッフ全員でガンガンぶん回すお店をイメージしていた。
そのイメージは膨らむばかり。。。
取らぬ狸の皮算用ばかりして。。。
天神店であれだけ売り上げるならその倍は売るやん!えっ倍の売り上げって利益は相当やん!
ブルブル震えてたのを覚えている。
経験ある人ならわかると思う。
ね!
それが見事に、しかも音を立てて崩れていこうとは思いもよらなかった。
夢に燃えた青年の思いや理想、計画が木っ端微塵に吹き飛ばされることになるのである。
その頃、天神店に黒ずくめの服装の有名な建築デザイナーの江里先生がよく来てくれてた。
桜坂観山荘・イムリ・寿司近松などをデザインされてる先生。
高級店をデザインする先生で有名だった。
その先生に嬉しくてその構想を話したら、
「僕がデザインしようか」
「あ、いやいや、そういうお店でなくてですね。簡単な屋台村劇場みたいな、なんていうか席数多く作るので、なんていうか先生じゃもったいないというか、なんていうか違うんですよ」
「いや、面白そうだから僕にやらせてよ。」
「いや、面白くないと思いますよ予算も少ないですし。」
内心嬉しかったのは事実ですが。
あの先生が八兵衛デザインするって
どうなるんだろう?
それはそれでとても興味があった。
けど今回だけは違うし。
特に今回は大切な3号店。
3号店ってとても大切。
2号店も最初の一歩の次の一歩だからとても大切。
その2号店でうまくいって3号店というのはよくよく考えてやらないと。
それまでの利益をくってしまう。
3号店がうまくいくと、4号店は遊べるというかチャレンジができる。
3号店
これでその後が決まると言っても過言ではない。
何度断っても江里先生はやる気満々で、やるつもりの雰囲気で天神店にいらっしゃる。
最後は折れてというか興味もあったし嬉しかったしで先生と一度打ち合わせをした。
絶対譲れないこと。
これは飲食経営者ならわかると思うけど、席数だけは譲れない。
35坪
70席×客単価×客数=売り上げ
この方程式で家賃を考える。
70席 この席数だけはゆずれませんよ。予算はデザイン料は別で坪70万円前後で造作してくださいよ。承諾してくれたみたいだ。
そんな感じで江里先生にデザインしてもらうことになった。
まず最初の平面図を見て驚いた。
あいた口がふさがらなかった。
「先生、何席できました?」
「40席」
「え?平面図見せてください」
確かに40席しかなかった。
天神店は22坪で40席。
3号店は35坪で40席。
「えっとぉ。。先生、これ40席ってなんすか?」
「今度の八兵衛」
「はい?このエントランスってなんすか?ここだけで10席できますやん。」
「そのエントランスはとても大切なんだよ。」
「えっとぉ。。。僕たちにとっても大切なスペースでして。そこに客席がなくてエントランスってなんですのん?」
だんだんタメ口になってきてるのが・・・わかった。
そして圧巻はカウンターの席数だ。
「カウンターは20〜25欲しいんですけど。12席しかなかった。ここもう少し長くすればあと4席作れますよね?」
「いや、そこを伸ばすとキッチンのゴミ箱とか裏側が見えるから」
そして最後にこう言われた一言に僕はキレた。
キレたって言葉悪いね。
けど完ギレしてしまった。
「あ、いや、八兵衛はキッチン綺麗ですしゴミ箱とかみえないようにしますし、してますやん。」
先生はこう答えた。
「僕はそには座りたくないもん」
「えっ?いや、先生来なくていいですし全然ターゲットじゃないですし。いや、先生が来なくていいんで」
「じゃ、やらないっ」って言われた。
凄く我慢しておさえてと言いたいけど、怒鳴ってしまった。
「もう、先生とは仕事できません!
ここまでどんだけ苦労してきたと思ってんですか!」
そこで席をたった。
この案は終わった。
どうしようかと思って次の日、現場にいくと江里先生が仕事してた。
墨打ちといって現場に図面の線を引く作業をしてた。
なんで?
つづく
店主 八島 且典