六覺燈物語(ろっかくてい)
ワインと串揚げのお店「六覺燈」様との出会い
最終話「次第仕送り」
初めて六覚燈さんにお邪魔して大迷惑をかけたあの日から3年あまりたっていました。
その間に六覚燈さんには何回通ったかわかりません。
いつも私に色んなヒントを与えてくださったり
いつも高いワインをお勉強やからと、こっそり飲ませてくださったり
ワインのお話を沢山してくださったりしたオヤジさん。
そして、弟の修業まで引き受けてくれたのです。
弟・淳也から修業の中身を聞いてビックリしました。
オヤジさん、寝る時間を惜しんでまで飲食についてお話しをしてくれてたのです。
短期間やからと。
「うそやろ!そりゃあ1日も早よお礼ば言いにいかないかんばい!」
たくさんのお礼の品
たくさんのお礼の言葉をたずさえて
大阪・六覚燈さんへスッ飛んて行きました。
「もう。。。
そんなことはせんでよろし!って言うたでしょ。
気持ちは十分伝わってますから、こうして大阪まで来てくれただけで十分ですやん。笑」
「いや、もう、どうお礼を言っていいかわかりませんし、
どうしていいかもわかりませんから…
しかし今回は弟が大変お世話になったわけでして…」
いつもオヤジさんは
お礼を受け取ってくれません。
受け取ってもそれ以上のサービスをしてくれるのでうかつにお礼もできないのです。
受け取ってくれないのはわかっていましたが、どうしてもお礼をしなければと。
そのことはわかっていたのですが今回ばかりはそうともいかんやろと。
そして、
席に座っていると
オヤジさんが私の目の前で
最高級ワイン
「1961シャトーラフィット」を
ポンと置いて
ポンと抜栓されて
私にサーブしてくれてる
えっ??
「お礼のお礼やね。笑
このワインは素晴らしいよ。
あなたと同じ年数生きてきたんとちゃいますかね。
はい、ワインのお勉強しなはれ。笑」
にこにこしながら言ってくれました。
1961、それは私の生まれ年…
その瞬間にとっさに席を立ち
頭を下げて
こう言いました。
「もうこれ以上のことは私にせんといてください!
もう何もせんといてください!
お礼のしようがなかとです!
私にはお礼のしようが…」
オヤジさんは私をさとすように言ってくださいました。
「次第仕送りいう言葉がありましてな。」
「しだいしおくり…」
「受けた恩は下に返すいうんです。
(親から受けて
嬉しかったことを
有難いと思ったことを
親に恩返しするのではなく
それをそのまま子に返すのです。
親(大人)はそういうつもりで
子に伝承し
子はそういうつもりで
伝承され
親(大人)になったら
子に伝承するのです。)
私もこの世界で
沢山の人さまに面倒みてもらってきました。
沢山の方々によくしてもらったり勉強させてもらいました。
決して一人で生きてこれたわけではありませんがな。
こうやってお客様の前に立ててるだけで幸せなんですよ。
そのご恩をあなたにちょこっと返してるだけやから気にせんといて。笑
もし、あなたが
私みたいのに恩を感じてるのなら
どうかそれを
今のスタッフさんや
これから出会う人に返してみてはどうでっしゃろ。
若い人にしてあげてはどうでっしゃろ。
それでええんですよ。
それに商売さしてもらってて一番嬉しいんは人の成長ですわ。
これ以上の喜びなんてありはしません。
なっ、そうでっしゃろ?
受けたご恩は下に返す。
その人がそれで成長する。
そんでよろし!」
その時のワインの味は残念なくらい覚えてないのです。
美味しい!って言ったまでは覚えているのですが。
そのオヤジさんが
今年の三月いっぱいでセミリタイアされると聞いたのです。
私はいてもたってもいられず
すべての八兵衛社員を連れて六覚燈さんへ行ってきました。
みんな
それぞれの感性で
何かを感じとってくれたと思います。
その感じとったことをそれぞれのフィルターを通して
仕事や人生で表現してくれたら嬉しいです。
でも、
一番嬉しかったのは私かもしれません。
あれから16年。。。。
こうやって
みんなと一緒に美味しい串揚げを食べれて
美味しいワインを飲めて。
本当に有難いです。
オヤジさんも喜んでくれたのではないでしょうか。
これからも
私はオヤジさんに受けたご恩を
沢山の方々に受けたご恩を
少しづつですが
返して
生きていこうと思っています
この大好きな
飲食人生で。
焼とりの八兵衛
店主 八島且典
2016.3.27
大阪府大阪市中央区日本橋1-21-16 たこそうビル2F
定休日:月曜日
営業時間:17:00~23:30(L.O.22:00)
06-6633-1302
六覺燈物語