上人橋通り物語 第七話

 

「えっと、ジョージナカシマの椅子ですか?」

「うーん、お高いからジョージナカシマにしたかったですけど。他の良いメーカーでよく似たデザインがあったからそれにしましょう」

 

僕の顔色でわかったのか、

とうに大幅どころじゃない大幅予算オーバーをわかっていたのか。

 

ジョージナカシマに似た良質のブランドにした。このメーカーも今はかなり高いらしい。

クラハウス 現在は高山ウッドワークスの椅子だ。

当時2〜3万円だったかと。

それでも僕には高かったけど。 

 

しかし、20年もってるって凄い。

良いものってそう言うことなんだ。

 

「それから、串は寿司近松さんみたいに瓦を焼いてそこに置きましょう。焼き鳥の脂がたれるといけないから、筋をいれて焼いてもらいましょう。」

器や湯呑みにいたるまで、全てあかざコーディネイトだった。

 

この江里デザインの八兵衛に合う調度品を選んで買い付けするのが、あかざさんの仕事。

 

もう、何が何だかわからなくなってきた。

 

キャベツの上に

焼き鳥おかんのかーい!

瓦焼いて、そこに串を置くって全く意味わからない。 

寿司屋じゃないし!

 

とは言え、近松さんってワードに弱い。その当時一番好きなお寿司屋さんだったし、すべてが好きだった。

 

近松以前の寿司屋さんでは、つけ台と言って木のカウンターを二段仕立てのカウンターにして、木のカウンターの上に寿司を直に置いていた。

 

瓦に足をつけて、つけ台に置くのは、世の中には存在しなかった。

 

食器屋さんに、特注しないと既製品には存在しなかったから。

 

「焼とり屋さんでこれを使うのは八兵衛さんが最初だと思いますよ。」

 

その最初とか先駆者とかそう言うワードにめちゃくちゃ弱い。。。。

 

もう、完全に麻痺してきてる。

ふらふらだったし。

よく寝れてなかったし。

 

そうやって八兵衛のトレードマークにもなっている下駄をつけた瓦が誕生したのである。

 

そしたらまた江里先生が僕にトドメをさしにきた!

 

換気扇のフードを黒にしよう!

ブラックステンレスを使いたい。

 

えっ? 

実はここからが本当の戦いだった。

 

強烈なジャブを何発も打ち込まれて、ふらふらになってるところに右ストレートと左ボディを打たれた感じだった。

 

もう無茶苦茶やん。。。 

やめて、、、。

 

「先生、八兵衛の換気扇フードは僕達の命なんですよ!いつもピカピカにしていたいんですよ。だから

ステンレスでお願いしますよ!」 

 

「うーん、じゃもう僕やらない」

 

はい?

耳を疑った。

やらない?やめる?

ここまできて?

 

じゃあの時に、

やめときゃよかったやん!

あゝ胃がとけるとける。。 

痛い…。

 

まさか換気扇フードを黒にすると言い出すとは。

 

で、先生やめてどうすんの?

子供かよ!

 

つづく

店主 八島 且典